O.K.牧場の決闘 - 親カウボーイの証言 その3 [ワイルドウエスト]

O.K.牧場の決闘 - 親カウボーイの証言 その3

§ ビーハンの証言の見直し

 O.K.コラール近くのガンファイトでは、最初に二発の拳銃による銃撃で始まったことが多くの証言で確認されている。この二発を撃ったのは誰か。
この部分について、ジョン・ビーハン郡保安官の証言を引用すると、

「彼らがクラントンたちとマクローリーたちの数フィート内に達した時、彼らの一人が――私はワイアットであったと思うが、”You sons of-bitches, you have been looking for a fight, and now you can have it!” と言うのを聞いた。また、大体このとき私はある声が “Throw up your hands!” と言うのを聞いた。

 この間に拳銃(複数)が向けられていた。私は特にニッケル鍍金された拳銃を見ていた、それは一団のある一人に向けられていた。私はビリー・クラントンに向けられていたと思う。その時の私の印象はホリディがそのニッケル鍍金された拳銃を持っていたというものであった。私は彼が確かに持っていたというつもりはない。私が話したこれらの拳銃はアープたちの手にあった。

 “Throw up your hands!”という命令が与えられたとき、私はビリー・クラントンが “Don't shoot me. I don't want to fight!” と言うのを聞いた。トム・マクローリーは同じ時に彼のコートを開いて、”I have nothing” あるいは ”I'm not armed”、あるいは何かそのようなことを言った。彼は、彼が武器を持っていないことを私に示したときにしたのと同じ仕草をした、彼のコートの両側を持ち、それをこのように広げた[図示する]。ビリー・クラントンが闘いたくないと言ったとき、私は彼の手の位置を見なかった。私の関心は二秒ほどニッケル鍍金された拳銃に向けられていた。ニッケル鍍金された拳銃が最初に発砲した、そして直ぐに第二の射撃が-二つの射撃は正に同時に-これら二発は同じ拳銃からではありえなかった-それらは余りに同時に近かった。ニッケル鍍金された拳銃は右から二番目の者によって発砲された。右から三番目の者が二発目を撃った、もしそれを第二発と呼べるならば。次いで闘いは全面的になった。最初の二発が撃たれた後、二ないし三発が非常に速やかに撃たれた-私は誰によるのか言えない。最初の二発はアープ側によって撃たれた。私は最初の二発の直後の弾が誰によって撃たれたのか断言できない。その時の私の印象は、次の三発は最初の二発と同じ側から、即ちアープ側から来た。[弁護団は証人が彼の印象を述べることに反対した。却下された。]これは、その場所にいてそれを見たときの、私の印象であった。」

 ビーハンが反対尋問に返事が出来なかったように、散弾銃を持っていたホリディが「(ニッケル鍍金された)拳銃で最初に撃った」というのはあり得ない。では、撃ち合いの開始時にニッケル鍍金された拳銃を見たというのはホリディを陥れるための全くの絵空事の偽証なのか?しかし、別の見方もできる。

 ビーハンの証言には、この目的で偽証をするには不必要な内容がある。

 ビーハンは、「ニッケル鍍金された拳銃は右から二番目の者によって発砲された。右から三番目の者が第二発目を撃った」とも証言した。

 銃撃が始まったときのアープ側の配置は、左から右にヴァージル、ワイアット、モーガン、ホリディであり、ヴァージルは空き地に入り、ワイアットはフライの建物の角、モーガンはワイアットの少し右側の歩道上、そしてホリディはモーガンの少し右側の路上にいたことはほぼ一致した見解である。

 それによれば、右から二番目の者はモーガン、三番目はワイアットということになる。

 ビーハンの証言時に、ガンファイトの配置図が法廷にあったようだが、残念ながら参照した資料にはその図は載っていなかった。ただビーハンの説明では、8がホリディ、5がヴァージルとなっているので、やはり上記の見解と同じであったと思われる。

 ある意味、これは当然の帰結である。ヴァージルは右手に杖を持っていた。ホリディは散弾銃を持っていた。最初に発砲された二発が拳銃からのものであり、どちらもアープ側によるものであれば、拳銃を使う手が空いていたのは、ワイアットとモーガンだけである。

 ビーハンは検死官審問とスパイサー聴聞(裁判)の両方で、前記の証言をほぼ繰り返している。それなのに何故、「右から二番目の者」とホリディの矛盾を無視したのか分らない。

 アープ側の各人がどんな拳銃を使ったのかは知られていない。ドク・ホリディと『ニッケル鍍金された拳銃』を結びつけているのはビーハンとクレイボーンの証言だけであり、しかもそれは人物を特定して言っていたのではなく、『ニッケル鍍金された拳銃』=ホリディの拳銃という先入観に基づいていたとも言える。もし、本当にホリディが『ニッケル鍍金された拳銃』を使っていたとしても、モーガン・アープが『ニッケル鍍金された拳銃』を使っていなかったことは言い切れない。


〇 “Murder in Tombstone” のシナリオ

 Steven Lubet著 “Murder in Tombstone” ([コピーライト]2004)は、「アープ/ホリディ裁判」の経過を主に描いた本である。この著者は、ワイアットが証言した、ビリー・クラントンとフランク・マクローリーが拳銃を抜き始めたのを見てから、ワイアットがポケットに入っている拳銃を抜いてビリーとほぼ同時に撃つことは物理的に不可能という観点から、実はワイアットは既に拳銃を手にしていたと見る。そして、フランクの(ワイアットから見て)不審な動きに反応して撃ち、続いて、やはり拳銃を手にしていたモーガンが撃ったとする。

 アープたちが空き地にやって来たときの状況は、アープたちのほうがずっと「アグレッシブ」であり、また撃ち合いの経過から見て、最初の二発をアープ側、(どちらが先であったかは別として)ワイアットとモーガンが撃ったというのが、最もありそうなシナリオである。

 ワイアットあるいはモーガンが何故撃ったかを知ることは事実上不可能である。誰かが真実を言い当てたとしても、それを証明することはできない。

 “CooperToons”という一風変わったWebSiteの”THE GUNFIGHT AT THE OK CORRAL”では、次のようなシナリオを提示している。
「ヴァージルは“Throw up your hands!”と言った。そこでビリー・クラントンは手を上げようとした。するとヴァージルは続いて “I want your guns!” と言った。そこでビリーは先ずは銃を渡そうと考え、銃に手を伸ばした。それを見たアープたちは、ビリーが撃つために銃を抜こうとしていると思い、撃ち始めた。」

 因みに、クレイボーンの証言によれば、ビリー・クラントンの拳銃ホルスターはガンベルトの左側につけられていた。(1993年の映画『トゥームストーン』では、ビリー・クラントンのホルスターは正しく左側になっている。)

 空き地に来てビリー・クラントンとフランク・マクローリーが拳銃をガンベルトのホルウターに入れているのを見たとき、ワイアットとモーガンは彼らに拳銃を突きつけた。そして何らかの理由で彼らは撃った。というのが最もありそうなシナリオである。

 こうして “Fighting is commenced.”


§ ガンファイトの経過についてのビーハンとC.H.ライトの証言

 ビーハンは、前記の証言を次のように続けた:

「『手を上げろ!』という言葉が発せられた後、ニッケル鍍金された拳銃が発射された。私は、『手を上げろ!』と言ったのはV. [Virgil] W.アープであったと思う。多くの闘いと銃撃が進行した。次に[ここの数語は解読できない。]私は、フランク・マクローリーが通りでよろめいているのを見た、片手を彼の腹に当て、右手で拳銃を持っていた。私は彼がモーガン・アープに向けて撃つのを見た、そして拳銃の方向から彼は地面を撃ったと言うべきである。フランク・マクローリーはフライの建物に向けて二回撃った、そして彼が通りを横切り始めた、その時彼はモーガン・アープに向けて撃った。私はその方角から二発を聞いた。私は彼が通りの半ばまで横切った後、彼を見なかった。私の関心は他の方角に向いていた。次いで私はその方角を見て、フランク・マクローリーが走っていて、一発の弾丸が発射され、彼は頭から倒れた、そして私はモーガン・アープが『彼を仕留めた!』と言うのを聞いた。

 それが大体闘いの終わりであった。その後二発ほどあったかもしれないが、私は覚えていない。私は最初の二発の効果を見たとは言えない。私が闘いの間に倒れたのを見た関与者は、モーガン・アープとフランク・マクローリーだけであった。私は最初の二発の効果を示す人のどんな動きも見なかった。私はどんな兆候にも気づかなかった[解読不能]。

 私が撃たれたと確信した最初の人物はフランク・マクローリーであった。私は彼がよろめき混乱しているのを見て、彼が撃たれたことを知った。彼は最初の二発が撃たれた少し後であった。私はマクローリー側の誰の手にもどんな武器も見なかった、フランク・マクローリーとビリー・クラントン以外には。私はフランク・マクローリーが歩道上にいるのを見た、フライの建物とその先の貸間屋の間の空き地と反対側のロットの前面のリール(Lille)からほんの二、三フィート以内であった。

 マクローリーあるいはクラントン側の誰かの手に武器を見るまでに、八ないし十発が撃たれたと思う。私が拳銃を手にしているのを最初に見たのはフランク・マクローリーである。アイク・クラントンは最初の五発が撃たれた後に脱して逃げた。私は彼をフライの家の角の背後に見た、私が最後に彼を見たのはそこであった。私は彼がフライの建物の背後の建増に走って入ったと判断した。」

 夫のC.H. ライトは、フレーモント通りと三番通りの北西の角にあったアズテックハウスの三番通り側の窓からガンファイトを目撃した。彼が一階から見たのか二階から見たのかは知られていない。彼が見たのは二発の銃声に始まる最初の数秒が過ぎてからであった。彼はマシューズ医師による検死官審問でのみ証言し、スパイサー聴聞には召喚されなかった。

「私が『1、2』と数えることができるほど速やかに二発が発砲された、私は三番通りの窓に向かって跳び、フレーモント通りを見た、私は数人が撃っているのを見た。私が見たとき、一人の者[Tom McLaury]がよろめきフレーモントと三番通りの角の南側、丁度角の家に倒れるのを見た。私はその者が誰か知らなかった。」

 このフレーモント通りと三番通りの角に倒れた者がトム・マクローリーであったことは間違いなく、この証言によればトムは最初の数発の銃撃の間に撃たれたことになる。

 「私は再度通りを見た。私は三人[WyattとVirgil EarpとDoc Holliday](*1)が約10ないし15フィート(3-4.5m)離れて、大体通りの中央に立っていてフライの写真館とその西側(below)の家に面しているのを見た。私はもう一人の者が空き地に隣接した建物(bulding)に寄りかかっているのを見た[Billy Clanton](*2)。二人の者が家(house)の側に立っている者(*3)に発砲しているようであった[WyattとVirgil Earp]。
 その者(*3)は彼のする動きから撃たれたようであった。次いで彼(*3)は一発こちら側の者(lower man)(*4)に、北西側の者(*4)に向けて撃った、後に彼はホリディだと理解した。」

(*1)原文の説明では、WyattとVirgilとHollidayとなっているが、Wyatt、Morgan、Hollidayではないか?
(2*)原文の説明ではBilly Clantonとなっているが、Virgilで、右脚脹脛を撃たれて倒れたた後立ち上がりフライの建物に寄りかかっていたのではないか?
(*3)はBilly Clantonで、彼が一発Holliday(*4)に向けて撃ったと解する。

「馬と共にいる者(*5)によって撃たれた射撃は効果があったようにみえた、というのは、相手(the other man)(*6)は部分回転した。次いで私は家に向かっている者を見ていて、彼らの誰かが倒れるのではないかとずっと予想していた、そして彼(*6)は地面に倒れ落ちる(slide down)動きをして、明らかに負傷した。その瞬間馬が見えなくなった。わたしは彼が何処へ行ったのか知らない。このこちら側の者(lower man)(*5)は明らかに通りに向かって撃っていた。彼は一発か二発撃った。次いで私は、家(house)の横に倒れ落ちた者(*3)見た、頭と肩を家に寄りかかり、彼の拳銃を膝に載せ、二発を撃った。彼は第三発を撃とうとしたが、明らかに弱り過ぎていた。射撃は外れた。同時に背が高くグレーの衣服と鍔広の帽子を着た者がいて(*4)、通りの中ほどに立っていて、二発を明らかに家に寄りかかっていた者の方角に撃った。次いで、一人 (?) が通りの中ほどに現われて通りに撃った。家の角近くの地面に横たわったこの者(*3)は三発だけしか撃たなかった。彼は力を失ったように見えた。次いで、通りの北側にいた者たち(*7)によって更に二、三(a few)発が撃たれ、彼らは私の視野から去り、私は彼らを見ることができなかった。」

(*5)はフランク・マクローリーで、(*6)はモーガン・アープと考えられる、ビーハンが「フランクがモーガンに向けて二発撃った(一発は地面に当たった)」と証言しているのと符合する。
(*7)ガンファイトが終わる前にフレーモント通りに北側に行ったのはフランクだけなので、はっきりしないが、フランクとホリディか?

「次に私が見たことは、建物の角の南側に倒れている者の側に二人の者(*8)が立っていることであった。黒い服を着た背の高い者(*9)が手にライフル銃を持って現場に現われ、『その拳銃をその者から取り去れ、そうでないと私は彼を殺す!』と言った。このとき撃ち合いは全て終わり、私は全体で10ないし15秒を超えなかったと思う、この黒い服を着た背の高い者は、乱闘の関与者ではなかった。

(*8)はヴァージルとワイアットと思われる。
(*9)はフライの写真館の主人カミラス・フライ(Camillus Fly)である。

 六人が発砲したように見えた、四人は通りの中ほどに、一人は通りの南側、そして一人は馬と共にいた。後に、私はグレーのコートを着た者がドク・ホリディだと知った。全部で25ないし30発が発射されたと思う。散弾銃を持っていた者を見なかった。闘いは私のいるところから130ないし140フィート(39.6m-42.7m)離れていた。音から、最初の二発は拳銃で撃ったものと思う。散弾銃からの音が一回あったと思う。
 
 私は通りの角に倒れた者が闘いの間中そこに横たわっていたのを見た。私は彼が撃ったのを見なかった。彼は撃たれた最初の者であったように見えた。最初の二発の間には、人が拳銃を抜いて撃つのに十分な時間はなかった。それらは二つの拳銃からに違いない。二発目を発砲した者は、最初の弾が発射されたときに発砲する準備がされていたに違いない。私が聞いた二発は私が窓へ行く前に発砲されたが、そこへ行くのに一秒はかからなかった。」

 ライトはシルズと同様に関与者を知らなかった。彼の証言はそういう人の「生の目撃証言」の例を示している。彼はこれを検死官審問で証言したが、彼の証言はアープ側の有罪/無罪には関係しないので、アープ裁判には証人として召喚されなかった。
 
ライトが目に入った全てを正確に証言しているとは言わないが、フランクがモーガンを撃った描写はビーハンの証言と符合し、ビーハンの証言が「デタラメ」ではないことを傍証している。



O.K.牧場の決闘 - 親カウボーイの証言 その2 [ワイルドウエスト]

O.K.コラール近くのガンファイト - 親カウボーイの証言 その2

§ ガンファイトはどのようにして始まったのか

 O.K.コラール近くの空き地でのガンファイトはどのようにして始まったのか。誰が最初に撃ったのか。多くの証言では、最初に拳銃によるほとんど同時に近い二発の銃撃があり、その後識別できる暫しの間を置いて撃ち合いが全面的になったとする。

 これには、親アープと親カウボーイの相反するシナリオがある。親アープのシナリオでは、ビリー・クラントンとワイアット・アープが最初に撃ったとする。親カウボーイのシナリオでは、ドク・ホリディとモーガン・アープが最初に撃ったとする。

〇親カウボーイのシナリオ

 一般に言われている親カウボーイのシナリオは、ジョン・ビーハン郡保安官、アイク・クラントン、ビリー・クレイボーン、ウェズリー・フラー、ウィリアム・アレンなどの証言を総合したもので、実際にはそれぞれ少しずつ異なっている。一般に言われているのは、

 「アープたちがクラントンたちと対峙した時、アープ側の誰かが、“You sons of bitches, you have been looking for a fight, and now you can have it.” と言った。それに続いてヴァージル・アープが “Throw up your hands!” と言った。同時に、アープたちは拳銃をクラントンたちに向けた。ビリー・クラントンは “Don’t shoot me! I don’t want to fight!” と言い、手を上げた。トム・マクローリーは上着を開いて武器を持っていないことを示し、“I’m not armed.” と言った。その時銃撃が始まった。ドク・ホリディとモーガン・アープが最初に撃った。」

 このシナリオが疑問視される点の一つは、親カウボーイ以外の『中立な第三者』の証人に、クラントンたちが『手を上げた』と認める目撃証言がないことである。

 もう一つの点は、『ドク・ホリディが(拳銃で)最初に撃った』とする点である。
ビーハンは、「ホリディの『ニッケル鍍金された拳銃』がビリー・クラントンに突きつけられ、最初に撃った。」と証言したが、ドク・ホリディは散弾銃を持っていたことが知られている。ビーハンは弁護側からの

 「ホリディから撃たれた最初の弾は散弾銃からであった、彼が散弾銃を放り出してニッケル鍍金された拳銃を抜き、次いでニッケル鍍金された拳銃を撃った、というのは事実ではないのか?」

という反対尋問に、ビーハンは答えられなかった。

 また、コチーズ郡地区検事補W.S. ウィリアムズ (‘Winfield Scott Williams)は、10月26日のガンファイトの日の夕方、ビーハンがヴァージルを訪ねたとき、ビーハンがヴァージルに

 「私は君が『諸君、手を上げろ、私は諸君の武装解除に来た』と言うのを聞いた、その時マクローリーの一人が ‘We will,’ と言って銃を抜いた。撃ち合いが始まった。」

と話すのを聞いた、と証言した。これに関して問われたビーハンは、

 「私は、彼が『手を上げろ!』と言うのを聞いたと彼に話したと思うが、マクローリーが何か言うのを聞いた、あるいは彼が拳銃を抜くのを見たと彼に話したことはない。」

と答えた。しかし、ビーハンの証言の信用性はダメージを受けた。


〇親アープのシナリオ

 親アープのシナリオは、ワイアットとヴァージル・アープの証言に基づいている。要約すれば、

 ヴァージル・アープは右手に杖を持って、 “Throw up your hands! I want your guns!” と言った。フランク・マクローリーとビリー・クラントンが拳銃に手をかけ、抜く動きをした。ヴァージルは “Hold! I don’t want that!”と言った。ビリー・クラントンとワイアット・アープがほとんど同時に撃った。

ワイアット・アープの証言では:

 「我々は彼らに近づき、フランク・マクローリー、トム・マクローリーとビリー・クラントンがフライの写真館の西の建物の空き地の反対側の建物の東側を背にして並んで立っていた。アイク・クラントンとビリー・クレイボーンと私が知らない者(ウェズリー・フラー)は写真館と西の次の建物の間の空き地の大体半ばに立っていた。 ビリー・クラントンとフランクとトム・マクローリーは彼らの手を横にして、フランク・マクローリーとビリー・クラントンの六連発銃ははっきり見えた。ヴァージルは「手を上げろ、私は君たちの武装解除に来た!」("Throw up your hands; I have come to disarm you!")と言った。ビリー・クラントンとフランク・マクローリーは彼らの手を六連発銃に添えた。ヴァージルは、「止めろ、そうではない!」("Hold, I don't mean that!")と言った。次いでビリー・クラントンとフランク・マクローリーは彼らの拳銃を抜き始めた。同時に、トム・マクローリーは彼の手を右の腰に下ろし、彼のコートをこのように[どのようにかを示す]投げ、そして彼の馬の後ろに跳んだ[実際にはそれはビリー・クラントンの馬であった。]
 
 私は拳銃をオーバーコートのポケット入れていた。ビーハンが他の一団を武装解除したと我々に話したとき、私はそれをそこに入れていた。ビリー・クラントンとフランク・マクローリーが彼らの拳銃を抜いたとき、私は拳銃を抜いた。ビリー・クラントンは私に銃を向けたが、私は彼を狙わなかった。私は、フランク・マクローリーが優れた射撃の腕で危険な者であるという評判を知っていて、私はフランク・マクローリーを撃った。最初の二発はビリー・クラントンと私によって発射された。彼は私に向けて撃ち、私はフランク・マクローリーに向けて撃った。私はどちらが先に発射されたかわからない。我々はほとんど同時に撃った。次いで闘いは全面的になった。」

ヴァージル・アープは:

 「彼等を見るや否や、私は「諸君、手を上げろ、銃を渡せ」("Boys, throw up your hands, I want your guns,")あるいは「武器」(“arms”)であった。それとともに、フランク・マクローリーとビリー・クラントンは銃を抜きそれらをコックし、私はそれらが「クリック、クリック」そるのを聞いた。アイク・クラントンは彼の手をこのように(描く)胸に上げた。そこで私は、両手を上げるように言った、その時右手に杖を持っていた。「止めろ、私はそれを望まない!」("Hold on, I don't want that!") 私がそれを言ったとき、ビリー・クラントンは彼の六連発銃を前に向け、フルコックした。私は、私の隊の左に立っており、彼(ビリー)はフランクとトム・マクローリーの右に立っていた。彼は私を狙っていなかったが、彼の拳銃(の狙い)は大体私を通った。二つの銃撃が正しく一緒に放たれた。ビリー・クラントンはその一人であった。同時に、私は杖を左手に持ち替え、銃撃を始めた。それは全般的になり、誰もが闘いに入った。」

(Q) 君は、闘争の開始時に二発が同時に近く撃たれた、そしてビリー・クラントンがその一人であったと言った。もう一発を撃ったのは誰か?
(A) ワイアットがそれを撃ったと考えるようになった。

 このシナリオに符合する証言をした『中立な第三者』の証人は一人だけいた。H.F. シルズ(Sills)である。彼の証言では、

 「・・・私は会話を聞くには十分近くはなかったが、彼らが拳銃を直ちに抜くのを見た。保安官はそのとき右手に杖を持っていた。彼は手を上げて話していた。・・・そのときまでにビリー・クラントンとアイワット・アープが彼らの銃を撃った。・・・」

 親カウボーイのシナリオと違って、親アープのシナリオは一応筋が通っているように見えるが、疑問はある。

 一つは、クラントン&マクローリー側はフランクとビリーしか拳銃を持っていなかった。アープたちは知らなかったかもしれないが、フランクもビリーも当然それを知っていた。それで四人を相手にして、しかもその一人は散弾銃を持っているのに、撃ち合いをする気になるだろうか?

 もう一つは、アープたちは「決闘」(duel)をしに来たのではなく、クラントンたちの武装解除に来た。例え本当にビーハンがアープたちに「彼らを武装解除した」と言ったとして、そしてアープたちがそれを信じで拳銃を収めたとしても、フランクとビリーが拳銃を携帯しているのを見たのに、相手が拳銃を抜くのを待ってから自分の拳銃を抜くようなことをするだろうか?

 ワイアット・アープの言ったことは、ある意味自己矛盾である。「(相手が武器を持っていると考えたので)武器を手にしていたが、ビーハンの言葉で相手が武器を持っていないと信じたので武器をポケットに入れた」にもかかわらず、「(相手が武器を持っているのを見て確認したのに)相手が銃を抜くまで抜く動作をしなかった。」本当は、相手が武器を持っているのを見たら、その時点で銃を取り出したのではないか?

 ワイアット・アープとヴァージル・アープの証言は、全面的には信用できない。


§ シルズの証言について

 H.F. シルズは次のように証言した:

(Q) 1881年10月26日に彼が聞いた脅しについて問われる
(A) 私は四、五人の者がO.K.コラールの前面に立っているのを見た、彼らがヴァージル・アープと持った何か揉め事について話していた、そしてその時彼らは脅しをした、即ち、彼らは彼に会ったら彼を殺すだろうと言った。その一団の誰かがその時大声で話し、彼らはアープの一団に会ったら彼ら全体を殺すだろうと言った。次いで私は通りを(東へ)歩き、ヴァージル・アープとアープたちは誰か知りたいと聞いた。路上のある人がヴァージル・アープを私に指し示し、彼は市保安官だと言った。私はそこへ行って、彼を一方の側に呼び、彼に私が立ち聞きした、この一団がした脅しを話した。彼らの一人はそのとき頭に包帯をしていた、そして葬儀の日に彼はアイザック・クラントンであると教えられた。私は彼をその一団の一人と認識した。

(Q) 撃ち合いについて質問される
(A) 私が保安官に話した数分後、私はある一団が四番通りを下り始めたのを見た。私は彼らについて郵便局まで下った。次いで私は、それらの脅しをしているのを私が聞いた一団が視野に入った。私は揉め事があるだろうと考え、そして通りを横切った。私は保安官と一団が行って、他の一団に話すのを聞いた。私は会話が聞こえるほど近くはなかったが、彼らが直ちに拳銃を抜くのを見た。保安官はその時杖を彼の右手に持っていた。彼は手を上げて話した。しかしながら、私は言葉を聞かなかった。そのときまでに、ビリー・クラントンとワイアット・アープが彼らの銃を撃ち、保安官は杖を片手から他方の手に変え、拳銃を抜いた。彼はその時撃たれたようで倒れた。彼は直ちに起き、撃ち始めた。銃撃はそのとき全面的になり、(私は)コートハウスの脇のある玄関に後退した。

(Q) 君はどのようにしてビリー・クラントンを知ったか?
(A) 私は彼が死んだ後で見た、そして彼がワイアット・アープに向けて撃った者だと認識した。

 シルズの主尋問に対する証言はこれだけである。そしてこれはアープ側が必要とするものの全てでもある。即ち、

・クラントンたちは、アープたちを殺すと脅していた。これはアープ側がクラントンたちの武装解除に行き、その後の行動が自衛の行動であったことを立証する。
・ビリー・クラントンとワイアット・アープが最初に撃った。それはワイアット・アープの証言の正しさを示し、クラントン側が先に銃を抜く動きをしたというワイアットの証言を傍証する。

 告訴側は反対尋問でシルズが何者なのか、以前にアープたちとの関わりがなかったか詮索したが、彼の尻尾をつかまえることはできなかった。

 シルズの証言は、既に「製錬された」もので、弁護側にとって必要な情報だけで構成されている。もし実際に彼がこれらを目撃したならば、彼の目にはもっと多くのものが入って来たはずであるが。

 では、シルズの証言に信憑性はあるのか?

 アレン通りのO.K.コラールの入口付近でクラントンたちを見たのはシルズ一人ではない。しかし、他の証言者は、彼らがO.K.コラールの前面で止まって話をしたのを見ても聞いてもいない。

 コールマンによれば、彼らはその前に通りの反対側のダンバーのコラールで話をしていて、O.K.コラールの前では止まらずに通過して行った。コールマンはビリー・クラントンが馬に乗り、フランク・マクローリーは馬を曳いていたと証言したが、シルズは馬を見なかったと言った。

 マーサ・キングは、マクローリー兄弟を「異様に目立つ服装」と言っていたが、シルズは彼らの服装について何の記憶もなかった。

 シルズの証言で、クラントンたちがヴァージル・アープの名だけを出していたというのも奇妙である。確かにアイクを拳銃で殴ったのはヴァージルであったが、前夜アイクが口論していたのはホリディとであり、ウォレス判事の裁判所でアイクが口論したのはワイアットとモーガンとであった。トムを殴り、銃器店の前でフランクに苦言を言ったのはワイアットであった。それなのにシルズの証言では、ヴァージルの名が出て、そしてヴァージルの名だけを聞いたので、彼はヴァージル保安官を捜しに行くことができた。

 シルズがガンファイトを見たのは、数十メートル離れた位置であった。空き地に入ったヴァージルがフライの建物やワイアットの陰に入らずに見ることが本当にできたのか疑問である。

 シルズは、ビリー・クラントンを死後に見て、彼が最初に撃った一人だと識別したと言った。しかし、どうやってワイアット・アープを識別したのかは、問われていない。ヴァージル、ワイアット、モーガンは背丈姿形が似ていて、よく知っている人でも遠目に見分けるのは難しい。しかもシルズから見て背を向けていたワイアットをどうやって識別できたのか?

 シルズによれば、彼が目撃の件を最初に話したのはジェームズ・アープに対してであった。(何日であったかは不明。)つまり、アープ側あるいは弁護側と接触する前に彼が何を知っていたかを確かめることはできない。

 どうみてもシルズは「作られた」証人である。




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