ピラミッド建設と国債 [経済雑感]

ピラミッド建設と国債

§経済学的にみたピラミッド建設の三つの方法

 前提条件として、エジプトは豊かな国で、農民は半年働いて1年分の収穫を得ることができるものとする。

(1) エジプト王は、農閑期に農民に労働奉仕を命じる。農民は生活費自前でピラミッド建設に労働を提供する。

(2) エジプト王は、収穫の半分を税として徴収する。農閑期に徴収した税を賃金として支払い、ピラミッド建設に農民を労働者として雇う。農民は農閑期の暮らしを賃金で賄う。

(3) エジプト王は、国債を発行して農民に買ってもらう。国債発行で得た金を賃金として支払い、農閑期に農民を労働者として雇う。

 要は、エジプトにはピラミッドを建設する労働力(および知識・技能)が存在するのであるから、どのようにしてそれをピラミッド建設に結集するかにある。

(3)の場合、国債は償還されずに毎年毎年発行され、累積していく。しかし、日本のエコノミストによれば、
 1) 国債はほとんどすべて国内で保有され、海外で保有されていなから問題はない。あるいは、
 2) 国の負債の分だけ国民は預金を持っているのだから問題はない。

(3)の代わりに、エジプト王は貨幣を作ってそれを賃金として支払い、ピラミッド建設に農民を労働者として雇い、農民が得た貨幣を税として徴収しても同じである。農民は農業で得た収穫で一年間暮らしていけるので、賃金として受け取った貨幣を使う必要はないからである。


§日本の政府債務累積問題

 翻って日本の政府債務累積問題を考えると、古代エジプトと同様に日本経済は経常収支で赤字ではない、即ち支出に見合った以上の収入を得ているのであるから、国債発行で財政に費やされる費用を賄うだけの経済力を持っていることになる。
 
 それゆえ「国債を累積しても問題ない」のではなく、国債を発行せずに全て税収で財政を賄うことも可能であることを意味している。

 もし、毎年毎年100兆円の財政が本当に必要ならば、100兆円の税収を得るのが正しいやり方である。

 日本経済を、企業、家計、政府、海外に分けてそれぞれの収支をみると、政府の支出は約100兆円、収入は約50兆円で約50兆円の赤字。家計はやや黒字といわれるが、ほぼ±0、海外は経常収支でみて仮に約10兆円の赤字(海外からみて。日本から見れば黒字)とする。すると全体の収支は±0であるから、企業は約60兆円の黒字となる。この企業の黒字分から50兆円を税として徴収すれば、政府の収支は±0となる。

 このようにしても、日本経済に何の影響も与えない。もう一度同じ経済の経過をたどれば、同じように企業に60兆円の黒字が出る。(その50兆円をまた税として徴収する。)使われずに貯めている黒字分で内部留保を増すか(間接的に)国債を買う代わりに税として収めるだけである。

 財政の赤字分を企業から税で取れと言えば、経団連は当然反対するであろうが、「経済成長すればXX年に財政のプライマリーバランスがとれる」という場合、(そのようなことが本当に起こるかどうかは別として、)その時の「企業、家計、政府、海外」の収支はどうなっていると考えているのか?まさか家計を赤字にするわけにはいかないから、上と同様に経常黒字分だけが企業の黒字になっているはずだ。

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