川端祐人著 「我々はなぜ我々だけなのか」 [読書感想]

我々はなぜ我々だけなのか -アジアから消えた多様な「人類」たち
川端裕人 著 海部陽介 監修 講談社ブルーバックス 2012.12.20 初版発行

【構成】
はじめに
プロローグ 「アジアの原人」を発掘する
第1章 人類進化を俯瞰する
第2章 ジャワ原人をめぐる冒険
第3章 ジャワ原人を科学する現場
第4章 フローレス原人の衝撃
第5章 ソア盆地での大発見
第6章 台湾の海底から
終 章 我々はなぜ我々だけなのか
監修者あとがき

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以前は、アジアの化石人類と言えば、ジャワ原人 Homo erectus erectus(以前は「直立猿人 Pithecanthropus erectus」と呼ばれた)、北京原人 Homo erectus pekinensis がすべてで、彼らがその後どうなったのか、恐らく新人が出現する前に絶滅していたと何となく考えていた。2003年にインドネシアのフローレス島で体長1m程度、脳容量も小さい小型の人類化石が発見され注目された。


本書は、主として本書の監修者海部陽介氏の調査研究に基づく、アジアの化石人類研究についてのルポルタージュ風解説書。
化石人類史といえば、アフリカ大陸におけるホモサピエンス登場までの進化史、ホモサピエンス「出アフリカ」後の拡散の歴史がほとんどの中で、本書は、アジアにおける化石人類研究の現状を俯瞰する貴重な本である。

本書によれば、ジャワ原人は、当初発見された120万年前~80万年前の化石から、断続的に5万年前までの化石が発見されている。アフリカの化石人類と異なり、この間原人→旧人→新人といった方向への進化はしていない。
    前期のジャワ原人(サンギラン、トリニール)  120~80万年前
    中期のジャワ原人(サンブンマチャン)         30万年前
    後期のジャワ原人(ガンドン)            10~5万年前

フローレス島で発見された小型の人類、フローレス原人(Homo floresiensis)は、当初12,000年前頃まで生存していたとされたが、最近の研究により5万年前に訂正された。また、同島の他の場所ソア盆地から発見された化石により、70万年前にはすでに小型化されていたことがわかった。
彼らがジャワ原人から進化したのか、あるいはより小型の現生人類から進化したのか、論争があるが、100万年前頃までにフローレス島にやってきたとされる。
フローレス島はオーストラリア区に属し、彼らがアジア区側からどうやって海を越えてオーストラリア区側に渡ることができたのかも謎とされている。

一方、北京原人は40万年前までに消滅したとされるが、台湾海峡の澎湖島の海底から、人類の下顎の化石が発見された。地引網に引っかかって引き上げられたとされるが、それが何年のことかは書かれていないので分らない。2008年頃から研究が始まり、2015年に「アジア第4の原人」とされた。19万年~13万年前程度とされる。

この他、中国の和県から出土した原人と考えられる化石が出土している。
「中国の旧人」については、名前だけで内容は具体的に示されていない。
これらは、未だ正式な分類がなされていない。

つまり、ホモ・サピエンス拡散以前のアジアの化石人類の研究については発展途上というより発展が開始されたところであり、今後が期待される。


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